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【海外遊び場紹介チャンネル】ドイツ編 エピソード4 Anlage【日本語訳:施設】

TOKYO PLAYが持っている国内外のネットワークを活かして、海外での遊びに関する取り組みを紹介していきます。
ドイツ編では、オーバーカッセル冒険遊び場で Praktikum(実習生)として活動されている、岡田真理子さんが現地の様子を執筆しています。
この企画が、みなさんにとって新たな気づきのきっかけになれば幸いです。
エピソード1・エピソード2・エピソード3 はコチラから。
Anlage【日本語訳:施設】
ドイツの冬は寒くて暗いことで有名です。11月から2月頃までの冬の時期は夕方16時半には真っ暗になってしまいます。長い冬の季節や、雨で外に出て遊べない日の冒険遊び場での子どもたちの過ごし方について印象に残ったエピソードをもとに書いていきたいと思います。
【施設の概要】
オーバーカッセル冒険遊び場には、雨の日や、冬の寒くて暗い時期に子どもたちが中に入ってあたたかくすごせる施設が2か所あります。
メインの施設には、入口付近にぺダゴーゲの事務所、簡易台所のあるキッチン室、メインの広いホール(小学校の教室2つ分くらい)、スタッフの更衣室、貸出するための出窓で外とつながった道具、材料貸出室があります。
このメインの設備には外から入れる2つの清潔なトイレが設置されています(前は男女にわかれていましたが、いまはジェンダーレスです)。トイレはきれいに掃除されていて、とても気持ちよく使えます。
この施設とは別に陶芸の設備と子どもたちが過ごせる小規模な部屋のついた施設があります。
メインのホールにはビリヤード台、サッカーゲーム台、ピアノ、冬限定の卓球台など楽しい室内遊具があります。
ドイツで人気のあるボードゲームもたくさんおいてありますが、今の子どもたちはあまり遊ばないようで遊んでいるところをみたことはありません。
部屋の隅に大きなソファーセットとテーブルがあり、このコーナーはとくに親密でリラックスした雰囲気です。よく仲良し同士が座ってくつろいだりしているのを見かけます。
放課後の学童施設というと学校の延長のような感じがしますが、ドイツの冒険遊び場のホールは、家庭のリビングルームのような温かみがありとても居心地がいいです。


エピソード1 Billardregelung【日本語訳:ビリヤードのルール】
ある日、私の息子が友達と2人で見よう見まねでビリヤードをして遊んでいました。
私は、ルールを教えても覚えられないだろうなと思い、でたらめな遊び方のままにしておきました。
そこに、ぺダゴーゲのFさんが通りかかり、子どもたちにドイツ語でステッキの持ち方からビリヤードのルールまで1から説明してくれました。
わたしが説明しましょうか、と申し出たのですが”Das ist meine Arbeit.(これは僕の仕事だ
よ)“といって、最後まで子どもたちに説明してくれました。
私はFさんがきちんと大人に対するように、しかも外国人の子どもにビリヤードのルール
を辛抱強く説明してくれたことに感動しました。
なぜなら私自身は子ども相手に説明してもわからないだろうとはじめから高を括って説明する手間を惜しんでいたからです。あとからFさんに「子どもにルールを全部、最初からきちんと教えるのはなぜですか?」と聞きました。
Fさんは「小屋づくりでも1からきちんと教える。ビリヤードでも適当にボールを投げられるより最初からきちんと教えた方がPraktisch(実際的)だからだよ。」と答えてくれました。


また別の日に、日本の投げゴマをもっていってみんなで遊びました。その時に、とても上手に縄を巻き、こまを投げられる日本人の男の子がいました。
Fさんはその上手な男の子に「自分はF(ファーストネーム)というよ。君は何という名前なの?」と自己紹介をするところからはじめて、投げゴマのルール、投げ方のコツを聞いていました。
これらの経験からドイツの冒険遊び場では、ビリヤードのルールを1から説明していたように子どもを大人と同じように1つの人格として尊重すること、またファーストネームで自己紹介することに表されているようにスタッフが子どもと対等であろうと心掛けていることを学びました。
追記
岡田真理子さん
ご主人の仕事の関係で2021年に家族と共にドイツに駐在し、現在ドイツ滞在4年目を迎えている。ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州の州都デュッセルドルフのオーバーカッセル冒険遊び場で Praktikum(実習生)として活動中。
ドイツの冒険遊び場で働く中で経験したことを子どもの遊びの活動に携わっている方々にエピソードごとにお伝えできたらと思い、今回のコラムを執筆している。
