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20224/6
【シリーズ:社会として子どもの「遊ぶ」を保障する】イギリス・ウェールズでの取り組み その3
子どもの遊びは環境問題
その昔、水や空気が当たり前にきれいだった時代、それを維持するための日々の生活の知恵はあったとしても、私たちは社会としてさほど努力することはなく、その恵みを享受していました。
公害病に代表されるように、きれいなはずだった水や空気が汚染され、人体にも影響が出てくるようになり、「環境問題」として、社会として本気で取り組まなければいけない気運が生まれました。
そして、公害対策法が生まれ、環境アセスメントが必須となり、環境基準に適合した取り組みや製品が義務化され、その動きをみんなで協力して支えていこうというキャンペーンや啓発教育が行われるようになって、今に至っています。
子どもの遊びは、どうでしょう?
大人が特別に関わりを持たなくとも、時には大人の目が配られながらも、子どもは子どもだけ存分に遊ぶことによる恵みを享受していました。
ところが、遊べていたはずの空き地はなくなり、海も川も里山も田畑も入ってはいけない場所になりました。
特に農村地帯では、少子化によって近所に暮らす子どもの数は激減し、学校の統廃合もあって、野山はあっても地域に子どもの姿はなくなりました。
以前には顔の見える関係の中で可愛がられたり、叱られたりしたご近所の大人と子どもの関係は、犯罪やトラブルへの不安からなくなり、コミュニケーションをすることさえも怖くなってきています。
都市部では、管理責任への不安やご近所からのクレームで、都市部では様々な禁止事項が公園の看板に書かれています。
そして、30年前にはおよそ半数だった子育て家庭は1/4程度に減り、子どもの存在は社会でマイノリティの存在となりつつあります。
子どもの存在に慣れていない人も増えているせいか、子どもが迷惑な存在ともなりつつあります。
学校の授業時間は長くなり、それ自体が悪いわけではありませんが、塾や習い事に通う子どもも増えています。
専門の大人が子どもを預かる場所が増えたことで、子どものすることがコントロールされる時間も同時に増えています。
その点では、子どもが自分の「今」を自分で決める自由裁量の時間も減っています。
子どもが遊ばなくなっても、子どもの身体や心、人間関係などに何の影響も出ることがなければ、特に問題はないのかもしれません。
ところが、子どもが充分に遊べる生活環境が失われることによる影響は、子どもの身体にも、心にも、人間関係にも、広く見られるようになってきました。
「子どもの遊びに大人が関わるのは野暮」ということが言われることがありますが、このまま放置することで事態が改善していくことはまったくなさそうです。
しかも、それは個人の小さな単独の努力だけでは、どうにもならなさそうです。
日本もかなり以前から、「子どもの遊び=環境問題」として、社会全体で取り組む時代が日本社会にも来てしまっているのではないでしょうか。
それは、「子どもに対して、大人が遊びを手取り足取りで指導する」というものとはまったくちがうレベルです。
「子どもは自ら遊び育つ」という環境自体を守ることができるように、様々な大人が本気になって力を合わせるということです。
ウェールズが国として取り組んでいたことは、そういうことだったんですよね。
新しく新設される「こども家庭庁」でも、こうした「環境問題として子どもの遊びをとらえる」視点が盛り込まれることを望みます。
それは政府だけでなく、私たちの主な活動地域である東京都でも取り組んでいくべきものとして考えられていってほしいと思います。
「すべての子どもが豊かに遊べる東京」の実現には、行政や政府といった存在の関わりが欠かせません。
TOKYO PLAYもその実現のために動いていきたいです。
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書いた人:嶋村 仁志
一般社団法人TOKYO PLAY 代表理事
一般社団法人日本プレイワーク協会代表/International Play Association日本支部運営委員/NPO法人日本冒険遊び場づくり協会理事/大妻女子大学非常勤講師
1995年、英国リーズ・メトロポリタン大学ヘルス& ソーシャルケア学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年より、羽根木プレーパーク、川崎市子ども夢パークなど、冒険遊び場のプレーリーダー(プレイワーカー)を歴任し、国内外で冒険遊び場の立ち上げや子どもの遊びに関わる人の研修や啓発に携わっている。
『〜バスカーズ・ガイド〜 プレイワーク きほんの「き」』発売中。『インクルーシブって、なぁに? 〜子どもを分けない場づくり はじめの一歩〜』翻訳中。