【シリーズ:社会として子どもの「遊ぶ」を保障する】イギリス・ウェールズでの取り組み その2

子どもの遊びの環境を向上させる義務(Play Sufficiency Duty)

2010年、ウェールズは「子ども家庭法(The Children and Family Measure 2010)」の中で、「質の高い遊びの環境は貧困による子どもへの悪影響を和らげ、レジリエンスを生み出す」として、子どもの遊びと参画への取り組みを盛り込むこととしました。

「機会の貧困」「経験の貧困」「希望の貧困」は、社会的、文化的、経済的にすべての子どもに悪影響を与えるという理由から、「子どもが十分に遊べる環境の保障は全基礎自治体の義務」となったのです。
具体的には、子どもが十分に遊べているかどうかの3年毎のアセスメントが2012年度より義務化され、アセスメントの結果に基づく計画の策定と公表が2014年より義務化されることになりました。これを遊び充足義務(Play Sufficiency Duty)と呼びます。

こうした精力的な動きを支えてきたのが、Play Walesと呼ばれる、子どもの遊びに特化した中間支援組織の存在です。
社会として子どもが遊べる環境をサポートするには、こうした専門的な見識を備えた中間支援組織の存在が欠かせません。
TOKYO PLAYでは、代表・嶋村がIPA(International Play Association・子どもの遊ぶ権利のための国際協会)の世界本部役員としてPlay Walesとの交流があったことから、2015年、2016年とスタディツアーでウェールズを訪ね、この一連の流れを追いかけてきています。

2016年のスタディツアーの中で、こうした政府の取り組みの進展について、当時の状況を知るスタッフに「どうしたら、ウェールズのように、社会全体として子どもの遊びに取り組めるような機運が作れるのか」と尋ねたことがあります。
その方は、「一日では、大きな理想は実現しない。それはウェールズでも同じで、少しずつ動きを積み重ねながら、少しずつ具体的なことが変化していくように提案をしていくのが大切だと思う」と話していました。

▶︎その3

書いた人:嶋村 仁志
一般社団法人TOKYO PLAY 代表理事
一般社団法人日本プレイワーク協会代表/International Play Association日本支部運営委員/NPO法人日本冒険遊び場づくり協会理事/大妻女子大学非常勤講師
1995年、英国リーズ・メトロポリタン大学ヘルス& ソーシャルケア学部プレイワーク学科高等教育課程修了。1996年より、羽根木プレーパーク、川崎市子ども夢パークなど、冒険遊び場のプレーリーダー(プレイワーカー)を歴任し、国内外で冒険遊び場の立ち上げや子どもの遊びに関わる人の研修や啓発に携わっている。
『〜バスカーズ・ガイド〜 プレイワーク きほんの「き」』発売中。『インクルーシブって、なぁに? 〜子どもを分けない場づくり はじめの一歩〜』翻訳中。

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