【海外遊び場紹介チャンネル】ドイツ編 第6弾 Kind ist Kind【日本語訳:子どもは子ども】

 とても天気の良い日が続いたのでなにか水を使う催し物をやりたいなと考えました。
日本の水の入ったヨーヨーはドイツにはないおもちゃだし面白いのではないか?と思いつきました。
 子どもたちと水風船で作ったヨーヨーを小さなタライに入れ、針金と毛糸とストローで作った釣り竿でつるコーナーを作ったら、ドイツの女の子たちが“Angelnmeisterin(釣り名人)”と大喜びしてくれました。

 水風船を輪ゴムでしばって手のひらで打ち返せる日本式のヨーヨーをつくったのですが、ドイツの子たちはあと1つ水風船をくっつけたいといい、好きな色の輪ゴムを選んで2つの水風船をアクセサリーのようにして大事に持ち歩いていました。

 子どもたちが並ぶくらいの大盛況で輪ゴムが先になくなってしまったので、毛糸しかないからペットみたいに持ち歩く感じでいいかな?と日本の子に聞くとむしろゴムより糸の方がいいと言われました。

 結局ヨーヨーとしてはほとんど使われず、ただの水風船をみんな大切なアクセサリーやペットのように持ち歩いていました。私はその光景をみて、子どもたちが私のヨーヨーというアイデアを思い思いに広げて自由に遊んでくれているなと感じ、とてもうれしくなりました。

 

 催し物は大盛況だったのですが、この日は天気がよかったのでたくさんの子どもたちが遊びに来ていて、ターザンブランコ(大型のブランコ)の取り合いからドイツの子と日本の子の間で喧嘩がおこりました。
 日本人の子は男女合わせて10人いたのですが、2人のドイツの女の子が2つしかない大型ブランコをずっと使っていて貸してくれないとのこと。

 私はその場を国別に平等に収めようと「ひとつをドイツの子たち、もうひとつを日本の子たちで分けて使おう。」と仲裁しました。しかしすぐに、私が提案したルールはなし崩しになり、両方のブランコをまたドイツの子が使ってしまい日本の子がドイツの子たちをブランコから引きずりおろそうとする強硬手段に出ていました。手に負えなくなった私は責任者ぺダゴーゲのLさんを呼びに行きました。


 Lさんはドイツの女の子たちに「あなたたちは2人、日本の子は10人。あなたたちの方が数が少ないのに左右に分かれて使うのはunfair だから使いたい子に渡しなさい。」と諭してくれました。私はLさんに「質問があるのですが、ドイツの子どもたちと日本の子どもたちに分けて1つずつブランコを使わせたのは正しかったでしょうか?」と聞きました。するとLさんは「これが正解というわけではないけど、2対10はunfair だから多い方に譲るべき。」と答えてくれました。
 その答えを聞いて私は自分がドイツの冒険遊び場としての正解があると思い込み、それをまねしようとしていたこと、またいつもドイツの子と日本の子を分けて考えていたことに気が付きました。

 

 冬の時期、たくさんある氷の取り合いは無意味だからやめた方がいいとFさんに言われた時と同じように、この場合も2対10は不公平だから、多い方に2つのブランコとも譲るというのが状況に応じた常識的な解決法です。
 もしこれが全員日本のこどもだったら国別に分けたりせずに状況に応じた解決法をすぐに思いつけたのに…と思うといかに自分が「ドイツの子」と、「日本の子」という枠にとらわれていたかを強烈に思い知らされました。催し物をしてきた経験からドイツの子と日本の子の作るものは見分けがつかないこと、遊びにわくわくする様子もまったく変わらないことを知っていたのに、なかなか国の枠を外せなかったのだなと思いました。

 そしてこのとき私は、以前Fさんに私が今日は日本の子しか催し物にこなかったので残念でしたと報告したとき「日本人しかこなくても子どもは子ども(Kind ist Kind)だからその子たちが楽しめたらそれで最高だ。」といっていたのを思い出しました。
 この言葉を思い出すと同時に、子どもは子どもだからドイツの子、日本の子に分けて考える必要はないと実感し、心が広がっていくのを感じました。そして今度こういうことがあったら状況にあった判断を、もしドイツ語でうまく説明できなくても、地面に絵でもなんでもかいて「子どもたち」みんなに同じように説明しようと心に決めました。
 そんな大きな気づきをもらった一日でした。


TOKYO PLAYが持っている国内外のネットワークを活かして、海外での遊びに関する取り組みを紹介していきます。
 ドイツ編では、オーバーカッセル冒険遊び場で Praktikum(実習生)として活動されている、岡田真理子さんが現地の様子を執筆しています。

この企画が、みなさんにとって新たな気づきのきっかけになれば幸いです。

第1弾第2弾第3弾第4弾第5弾 はコチラから。

岡田真理子さん
 ご主人の仕事の関係で2021年に家族と共にドイツに駐在し、現在ドイツ滞在4年目を迎えている。ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州の州都デュッセルドルフのオーバーカッセル冒険遊び場で Praktikum(実習生)として活動中。
 ドイツの冒険遊び場で働く中で経験したことを子どもの遊びの活動に携わっている方々にエピソードごとにお伝えできたらと思い、今回のコラムを執筆している。

お問い合わせ

各種お問い合わせ・ご連絡はこちらからどうぞ。