【海外遊び場紹介チャンネル】ドイツ編 第9弾 Speckstein Basteln1【滑石の工作1】

Speckstein Basteln1【滑石の工作1】

 ドイツの冒険遊び場には、屋内設備があり、壁一面の巨大な収納棚があります。そこには画用紙や大量の毛糸、絵具、マジックなどの工作資材や道具がぎっしり入っており、許可をとればイベントのためにこれらの資材を使うことができます。


 ある日この資材置き場を見ていたら、たくさんの滑石(柔らかい石で加工が簡単 ドイツ語でSpeckstein)の塊と紙やすり、および石を切るための糸のこ、石を削る武器のような道具類があるのを発見しました。

 「これで勾玉作りができるのではないか?」と私は思いレナさんに「この滑石を使ってイベントをやっていいか?」と聞くと、「もちろんいいが、粉塵(Staub)が飛ぶから必ず野外で実施してね。」と言われました。
 そして天気のいい日に、念のため粉塵対策のマスクを用意して滑石(Speckstein)の工作をしました。子どもたちは石を削ったり、穴をあけたりするのが超楽しいといって無我夢中で遊んでいました。そうすると何やら楽しそうなことをしているという空気があたりに充満するので、日本の子もドイツの子もみんな集まってきました。遠巻きに見ている子からも強力な好奇心が発動していることが見て取れました。

 当初の目的の勾玉は、やはりほとんど作られませんでしたが、大きい石を剣の形にしたり、小さな四角い破片をパズルにしたりと子どもたちは思い思いに加工していました。大きな石の塊がどうしても半分に切れなかったので、そのまま文鎮にした子もいました。それはそれで立派な文鎮になっていました。

 ドイツの子たちも参加してくれて、ひたすら石に穴を開けたり、刻み模様をつけたり、細かい加工に打ち込んでいました。種類によっては穴を開けようとすると割れてしまう石があり、折角作ったペンラントが割れてしまった子がいました。しかし2つに割れた破片を上手に利用して、合体できるペンラントを作って片方を仲良しのお友達にあげていました。

 あまりの人気にもう手ごろな大きさの石がなくなってしまったのですが、高学年の子たちは余った石をひたすら削って、石の粉をつくることに熱中していました。石の色の違いによって白い粉や黒い粉、茶色い粉が製造されていました。
 大人の私は、石がない!とか石に穴をあけると割れてしまう!と焦りましたが、そんな状況を逆手に取り、子どもたちが自分たちで勝手に楽しみを見つけていく姿はとても頼もしいものでした。子どもたちのとてつもない遊びのエネルギーを浴びて自分まで元気になった気がした帰り道でした。


Speckstein Basteln2【滑石の工作2】


 勾玉作りが大好評だったため、子どもたちの希望で2週連続同じイベントをすることにしました。しかし、小さい石は前回使い果たしてしまったので、残っている滑石の塊を切って使わなければならなくなりました。私は自分に経験がないこともあり、果たして、石が糸のこでちゃんと切れるのかという不安がありました。


 イベント当日、レナさんに「小さな石は全部使ってしまったので、滑石の塊を糸のこで切りたいのだがよいか?」と聞くと、「もちろんいいよ。これはあなたの判断に任せるけど、子どもたちで石は切れるよ。」と言われてとてもびっくりしました。子どもたちには石は切れない、という自分の思いこみが吹き飛ばされた瞬間でした。
 結果、1年生でも糸のこで石を切ることができました。子どもたちが教わらなくても溝を作ってから石を切っていたことに感心しました。とはいえ半分ほど切ると糸のこが石にはまってしまい、糸のこの歯が抜けなくなってしまうので、大人と交代することになりました。しかし子どもたちの中には、1人で切れる持続力と技術のある子もいました。

 わたしたちが石を切っているところにドイツ人の男の子が突然やってきて、石を削ってできた粉を取っていきました。「どうしたのか?」と聞くと、「自分で作った土の団子に石の粉をかけたかったから粉を取りにきたんだ。」と言います。私が、「粉ならここにいくらでもあるよ。」とありったけの粉を土の団子にかけてあげたらとても喜んでいました。
 また「指を怪我しちゃだめっていわれてるから石は切れない。」という子がいました。話をよく聞いてみると糸のこが怖いから切れないわけではなかったので、指を怪我しない方法で一緒に切ってみよう、と挑戦して、怪我無く切れました。

 私の個人的な考えですが、大人は子どもに「怪我をしてはいけない。」というのではなく「どうしたら怪我をしないように作業ができるかという方法を教えるべき。」だと思っています。なぜかというとこの場合のように「指を怪我してはいけない。」という禁止をすることで、指を怪我する可能性のある活動すべてが禁止され、結局どうしたら指を切らないで作業できるかということを学ぶ機会が損なわれてしまうからです。
 さらに長い視点で考えると、子どものときにどうしたらうまく作業できるかを学ぶ機会がないまま成長すると今度は大人になったときに、自分で子どもに教えることもできなくなるという負の連鎖も生まれるのではないかと思います。

 無事に楽しく2回目の活動が終わり、レナさんに報告しにいったら「Großartig!(すばらしかった)」といってもらえたので、私はとてもうれしかったです。
 このイベントを通じて、「子どもたちは何か楽しそうなことをしている!」という雰囲気をとても敏感に感じるということ、「何か楽しそうなことをやっているから自分もやってみたい!」という強い好奇心は言葉や国籍の壁をあっさり越えると言うことを改めて感じることができました。


TOKYO PLAYが持っている国内外のネットワークを活かして、海外での遊びに関する取り組みを紹介していきます。
 ドイツ編では、オーバーカッセル冒険遊び場で Praktikum(実習生)として活動されている、岡田真理子さんが現地の様子を執筆しています。

この企画が、みなさんにとって新たな気づきのきっかけになれば幸いです。

過去の記事はこちらから

第1弾:Angebot【日本語訳:申し出、提案】
第2弾:Selbstentscheidung【日本語訳 自己決定】
第3弾:Lebensgefühl【日本語訳 生きている実感】
第4弾:Anlage【日本語訳:施設】
第5弾:Winterspiele【日本語訳:冬の遊び】
第6弾:Kind ist Kind【日本語訳:子どもは子ども】
第7弾:Kinderstimmen sammeln【日本語訳:子どもの声を集める】
第8弾:Eine Quelle der Fantasie【日本語訳:想像の泉】


岡田真理子さん
 ご主人の仕事の関係で2021年に家族と共にドイツに駐在し、現在ドイツ滞在4年目を迎えている。ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州の州都デュッセルドルフのオーバーカッセル冒険遊び場で Praktikum(実習生)として活動中。
 ドイツの冒険遊び場で働く中で経験したことを子どもの遊びの活動に携わっている方々にエピソードごとにお伝えできたらと思い、今回のコラムを執筆している。


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