【登壇報告】子どもの権利条約総合研究所 研究総会パネルディスカッション🎤

 5/16(土)、子どもの権利条約総合研究所の公開パネルディスカッション

「子どもの権利としての居場所づくりの展望ー遊ぶ権利、学ぶ権利、自己形成の権利などの視点から」

に、代表・嶋村仁志が特別報告者として登壇しました。

 子どもを取り巻く大人の在り方を問い直す、学識者・実践者・研究者が一堂に会した場となりました。

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■ パネルディスカッション前半:子どもの現実から出発する

喜多明人さん(子どもの権利条約ネットワーク・早稲田大学)

 子どもを取り巻く現実の深刻さから始まりました。子どもの自死は年間532名、自己肯定感の低下、そして15歳未満人口が総人口の10.8%にまで減少し「子ども1人が9人の大人を相手にする時代」——子どもはすでに社会的マイノリティーであるという現状認識が示されました。

 こうした大人優位の社会構造の中で子どもたちは忖度するか「偽りの自己」を形成するしかなく、「今の社会で自分を生きることが非常に困難」という若者の声が広がっていると指摘。一方で、岐阜県本巣市の「自分の学校は自分で作る」条例学びの多様化学校・草潤中学校の実践など、子どもの自己決定権を制度として実現しようとする地方の先進事例も紹介されました。こども基本法・こども大綱・生徒指導提要の改定など国レベルでも「子どもの主体性」を重視する流れができてきており、「居場所を通した自己決定権・自己形成権の獲得が重要な時代になった」と述べられました。

 そしていじめ77万件・特に小学校低学年への集中という現実に触れ、「根本は遊んでいないこと、遊ぶ権利が侵害されていること」と述べ、「子どもの生活の場に全面的に遊びの場をつくることが、今の子どもたちを救う唯一の方法」として、遊び環境整備を政策として打ち出す必要性を訴えました。不登校35万人については「学ぶ権利」の問題として引き続き議論が必要であるとして、西野さんへとバトンが渡されました。

 続くパネルディスカッションでは、「公的支援の導入によって、子どもの育ち合いの場はどう変容したか」をめぐって議論が深められました。

西野博之さん(認定NPO法人フリースペースたまりば)

 公的支援が入ることで「支援する側・される側」という関係が持ち込まれ、もともと「共に支え合い育ち合う場」だったはずの居場所が「サービスの提供と消費」の場へと変質しつつあるという指摘がありました。「大人の良かれは子どもの迷惑」——大人が安全・清潔・効率を追い求めて介入するほど、子どもが自らトラブルを解決し関係調整能力を育む機会は失われていく。子どもたちが自分たちの力でぶつかり合いながら問題を解決する場面がテレビで「感動的」と受け取られる時代になったこと自体が、いかに子どもの自律的な力が奪われてきたかを示している、と指摘しました。

天野秀昭さん(認定NPO法人プレーパークせたがや)

 砂場にネットが張られ柵で囲まれていく公園の変容を入口に、「当事者性の喪失」という問題の核心を語りました。「食べる・眠る・出す・遊ぶ」を命の四本柱と位置づけ、遊び場はシステムとして社会が保障しても、その中身はシステム化しない——その原則を守ることが、子どもの自由と主体性を守ることだと述べました。また、遊んでこなかった子どもに遊びの希望を聞いても「遊びたい」とはなかなか言わない。つまり、子どもの声に耳を傾ける際には、大人がどこに耳を澄ますかが問われる、と述べました。

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■ 嶋村からの特別報告:
「遊ぶ権利と子ども施策の展望 〜イギリス遊び政策事例などから〜」

 「遊び」とは大人の娯楽の子ども版ではなく、人間が生まれながらに持つ本能的な欲求であること、そして子どもの遊ぶ環境の悪化は今や「世界的な環境問題」として捉えるべき課題だという前提を示しました。子どもは遊ぶことで身体的・精神的・社会的ウェルビーイングの三要素を、命令されることなく自ら整えていく——「遊ぶことは命の仕組みそのものだ」という言葉とともに報告が始まりました。

 日本の現状として、平日の外遊び日数が「0日」の小学生が78%、放課後に一緒に遊ぶ友達が「0人」の子どもが18%にのぼること、50年間で自然の中で遊べる面積が1/1000にまで縮小したことが紹介されました。

 公園には禁止事項の看板が立ち並び、市区町村の公園課にかかってくる市民からの電話の9割が苦情——こうした「監視・管理の文化」が子どもの遊ぶ環境を実質的に奪っているという現実も取り上げられました。

 海外の先進事例として、ウェールズ・スコットランド・イングランドの取り組みが紹介されました。ウェールズでは2002年の政府遊び指針発表、2006年の行動計画、2010年の「子ども家庭法」成立と段階的に制度化が進み、全自治体に3年ごとの遊び環境アセスメントと改善計画の公表が義務づけられました。

 アセスメントの三本柱は「時間(Time)・場所(Place)・許容性(Permission)」です。スコットランドでは2023年に都市農村計画法で遊びの充足義務が法定化され、2025〜2030年の「遊びのビジョンと行動計画」が策定されています。

 イングランドでは2008年に史上最大規模(約2.35億ポンド)の遊び戦略が実現したものの、2010年の政権交代で完全白紙となった経緯も紹介されました。政権が変わっても維持できる仕組みをどうつくるか、という問いを示す事例として取り上げられました。

 また「コットンウール・カルチャー(あらゆる危険から子どもを綿でくるむように育てる文化)」への対抗として、イングランド健康安全局が「危険と安全に関する都市伝説シリーズ」というポスターを発行し社会の空気を変えていった取り組みや、オーストラリアで2025年に発表された「Risky Play Position Statement(遊びの中で危険に触れることの重要性に関する見解声明)」も紹介され、「リスクを嫌う文化への問い直し」が世界的な動きになっていることが示されました。

 まとめとして、「遊ぶ権利」は「居場所づくり」の上位概念であり、遊ぶ環境の保障が教育・福祉・子育て支援・まちづくり・公衆衛生など、あらゆる政策分野に横断的な効果をもたらすという視点が提起されました。「時間・空間・許容性」の三軸を文化的・制度的にどう保障するか、様々な立場の実践者・研究者がつながって動きをつくっていくことが必要だ、ぜひ一緒につながりましょう!というメッセージで締めくくられました。

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■ 川野麻衣子さんの特別報告・まとめへ

川野麻衣子さん(NPO法人北摂こども文化協会)

 川野さんからは「学ぶ権利と子ども施策の展望 〜多様な学びと社会教育の課題などから〜」と題して報告がありました。不登校35万人の現実に対し、社会教育が学校教育の「補完」に押し込まれるのではなく、子どもが大人の管理から離れて自由に過ごせる「第三の生活領域」を地域の中に再構築していくことこそが社会教育本来の役割ではないか、という問いが提起されました。

 最後のまとめでは、喜多さんから「今の子どもの現実に向き合うことが子どもの権利の基本であり、今まさに小学生の問題を解決することが最優先課題。そのために遊びの権利を子どもの権利論として再構築していく必要がある」という言葉が語られました。西野さんからは「子どもが混沌の中でごちゃごちゃしながら育つことを、大人が信じられるかどうか」が問われ、天野さんは「遊ぶとは『私がやりたい』という心の動きを保証すること。その育ちを他の誰かが代わることはできない。だから環境を整えることこそが大人の役割だ」と述べました。甲斐田さんからは、学習指導要領への遊ぶ権利の明記を含め、政策提言活動への参加を呼びかけました。

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 遊ぶ権利・学ぶ権利・自己形成の権利——それぞれの視点から「居場所づくりのこれから」を問い直し、子どもの権利を保障する社会をつくるのは大人である——そのことを改めて問い直す場となりました。今日の議論を、引き続き政策と実践の両面で広げていきたいと思います。

ご参加・ご視聴いただいたみなさま、子どもの権利条約総合研究所のみなさまに、心より感謝申し上げます。

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