「遊ぶ」が街を変える日 -台湾・屏東県の取り組み-
01 はじめに
2026年4月、台湾・屏東県の行政職員をはじめ、民間団体・建築家等で構成される視察団(総勢23名)が来日。一般社団法人TOKYO PLAYが案内・随行を担いました。
屏東県は、子どもの遊ぶ権利(国連子どもの権利条約第31条)を行政の中心に据え、10年以上にわたって先進的な施策を展開してきた自治体です。今回の訪日は、日本における子どもの遊び・居場所に関する政策の最前線を学ぶとともに、日台双方の取り組みを共有し、共通の課題を議論する貴重な機会となりました。
「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」日であるこどもの日に寄せて、
今回は、私たちが伺った取り組みの一部をご紹介します!
02 屏東県の先進的な子ども遊び政策
屏東県社会福祉部門は、「子どもの遊ぶ権利は、食事・睡眠・呼吸と同じように重要な基本的生存の権利である」という理念のもと、10年以上にわたって一貫した施策を積み上げてきました。今回の視察では、屏東県社会処の戴如玎科長と、民間専門家集団「Beyond Playmaking」の李玉華氏が取り組みを紹介しました。
▼一郷鎮一特色遊具政策
10年以上にわたり全自治体で推進。
全ての新設公園において、子どもが参加するワークショップの実施を義務化しています。
▼プレイバン巡回活動
プレイワーカーを乗せたバンを各地に派遣し、7年以上にわたって僻地や離島、路地裏まで「移動式インクルーシブ遊び場」を届けています。
「県庁をジャックせよ、子どもが主役」
屏東県が2025年に始めた、県庁舎を丸ごと子どもたちの遊び場に変える大型イベントです。「遊び」を公共政策の媒介として位置づけ、行政機関に対する「大人向け、お堅い、触れてはいけない」という従来のイメージを覆す、県レベルのガバナンス・イノベーションとして注目されています。
2025年の第1回では2日間で23,000人、続く第2回では45,000人が参加。24部局が、自分たちで企画・運営する30以上のゲームブースを提供しました。

▼部局横断型のガバナンス
知事・副知事のリーダーシップのもと、秘書長が全体を統括。
総合企画・メディア対応・環境清掃・医療救護・交通・安全維持の各班が全24部局横断で編成されました。
イベント前には秘書長レベルで複数回の作業会議を重ね、意思決定と実行を一体で進めました。
▼職員向けワークショップ
このイベントでは、全ての部局がそれぞれゲームブースを作成しました。
ゲームブースの作成にあたって、全職員を対象に「子どもの目線に立ったコミュニケーション」のためのワークショップを実施。
子どもと同じ目線でしゃがみ、文字の高さや動線を点検するための「90センチの視点練習」や、政策概念を子どもが楽しめるゲーム形式に翻訳する手法を学びました。
▼子どもの参加の仕組み
子どもが実質的に意思決定に関わる、以下の3つの仕組みを設けました。
<ちびっこ県知事ステージ>
子どもが県庁の公式ステージに立ち、県知事や市民の前で意見を表明。
行政庁舎を公共ステージとして子どもに開放したのは初めての試みで、内容・進行は子どもと職員が共同で設計しました。
<一番面白かった遊び投票>
参加した子ども全員が投票権を持ち、各部局のゲームブースを評価。子どもが公共サービスの評価者となる仕組みです。
<ゲームブースと共創空間>
段ボールの街・落書きエリアなど、子どもが探索・創作・表現できる空間を設置。24部局それぞれが政策をゲーム形式に翻訳して出展しました。
▼第二回での制度化
第1回の成果を受け、第2回では「提案ワークショップ → 発表・投票 → 行政のフィードバック」という制度化された参加ルートを導入。子どもたちのアイデアのトップ3が県庁の政策実行に組み込まれる仕組みとなりました。また「遊びの首都」ブランドを立ち上げ、屏東の「こどもの日」を象徴するイベントとして定着させています。
03 Beyond Playmaking の実践:遊びで公共空間を子どもたちへ
台湾の民間専門家集団「Beyond Playmaking」は、12年間にわたり子どもの遊ぶ権利の提唱と実践を積み重ねてきたエキスパートです。その専門性は「子ども視点に基づいたプランニング・メソッド」にあり、屏東県の施策とも深く連携しています。
▼大FUN凱道
2024年・国連「国際遊びの日」制定を記念し、総統府前の凱達格蘭大道(ケタガラン大通り)を子どもたちに開放。過去113年間、大人の政治活動に使われてきた空間を「遊び」によって子どもたちが再構築した。

私たちは「遊び」を通じて、子どもの最善の利益を公共空間の中核に据えることを目指しています。
04 まとめ
屏東県の取り組みが示す最も重要な示唆のひとつは、「子どもの遊びを行政全体のテーマにする」という発想です。社会福祉部門だけでなく、交通・環境・メディア・教育など24の部局が一体となって「遊びを媒介して子どもが公共政策の主体となる」イベントを実現したことは、日本の行政にとっても大きなヒントとなりました。
また、「遊びは付随的な余暇のニーズではなく、基本的生存の権利である」という屏東県の揺るぎない理念は、子どもの権利条約を批准しながらも遊び環境整備の優先度が低くなりがちな日本の現状への問いかけでもありました。
「遊びを保障することは、公衆衛生の土台を作ること」—そのような想いを胸に活動するTOKYO PLAYにとって、今回の交流は大きな刺激となりました。
屏東県の10年が示すのは、自治体が本気で遊びに投資したとき、まちがどう変わるかです。
子どもの遊ぶ権利の普及と政策化に向けて、TOKYO PLAYも活動を続けていきます!